百花
キャスト・監督コメント
菅田将暉
/葛西 泉 役
川村元気さんとはこれまで色んな現場でお会いし、何本もお世話になっているのですが、世界中を飛び回り常に新しいものを探し続けるその姿勢に、どこか超人めいた華やかさを感じていました。しかし今回ご自身で書き、監督する「百花」を初めて読んだ時にびっくりしました。こんなにも小さな、小さな小さな物語。誰もが通る、親子の、家族の、褪せていく記憶の世界。どうしようもない人間の性が溢れていて、原作小説を読みながら気づいたら泣いてました。今、川村元気さん本人の手で残すべき作品だと思いました。自分の曖昧な記憶と向き合い、忘れていく人間を自覚し、足掻いていこうと思いました。そして、一生忘れられないテイクが生まれました。原田さんとふたり、ボロボロになりました。ふと思い出してはニヤニヤしています。公開が楽しみです。皆さまの記憶にこびりつき、明日がより豊かになる事を願っています。
原田美枝子
/葛西百合子 役
私自身、母の記憶にまつわるドキュメンタリー映画をつくっていたので、この本をすごく面白く読ませていただきました。当たり前だったことが次の瞬間分からなくなる、記憶を失っていく様をリアルにみせていくのは、非常に難しく大変でした。また現在の自分と20歳以上若い過去の自分の両方を演じたりと、いろいろなチャレンジがあり、冒険をさせてもらった現場です。
菅田さんは個性の強い方という印象だったんですけど、話し始めたらすごく素直で頼れる方で、たくさん支えてもらいました。川村監督は俳優のことをちゃんと見てくださる方で、信頼して身を任せることができました。
なかなかOKが出なかったシーンのロケで、ふと空を見た時、黒澤(明)さんや溝口(健二)さん、私の恩師である増村(保造)さんたちが並んで見守ってくれているような、不思議な感覚を味わいました。
みんなで魂を込めて作った作品です。楽しみに待っていてください!
長澤まさみ
/葛西香織 役
川村監督は芯の根というものがすごくピュアな人だな、と思っています。今まで色々な作品をご一緒させていただいてきた中でも、心が温かくて、よく俳優のことをみてくだっている方だと感じていますし、プロデューサーという立場で培ってきた川村監督の冷静さに、凄く信頼しています。今回は、監督が撮りたいものが撮れればいいね、という話を菅田さんともするくらい、温かい気持ちにさせてくれる監督でした。
共演させていただいた菅田さんは、軟体動物みたいに何にでもなれちゃう凄い人だな、と改めて思いました。人の、隙間に入り込んでくる感じや、その観察力、かといって威圧感を与える人ではないですし。この人なら信頼が置けると思いました。
本作は、記憶なのか、現実なのか、幻想なのかわからない描写が沢山あるので、そういうところが、どんな映像になってくるのかが楽しみです。きっと映画館で観るべき映画になるんだろうなと思っています。
永瀬正敏
/浅葉洋平 役
撮影を通して、川村監督は、自分の撮っている画の中にいらっしゃる人達や物達に、凄く愛情をもっていらっしゃるのを感じましたし、その分、画の作りには厳しい“ぶれない監督”でした。1シーン1カットで作っていくというのは、かなりの勇気がある決断だと思うので、現場では、監督やスタッフの皆さん・共演者の皆さんと、一緒にその決断をしっかり受け止めつつ、楽しみたいなと思いながら撮影していました。
また、共演させていただきました、原田美枝子さんは、デビューする前から、尊敬する俳優さんで、今まではここまで深くがっつり心を通わせる役で、ご一緒したことがなかったので、とっても嬉しかったです。
この作品は、原作も監督が書かれていて、「今の時代にどうしてもこの作品をとりたい」という思いが、深く深く染みこんでいる作品だと思います。様々な世代の、色んな立場の人が、本作のキャラクターを追って、楽しんで観ていただける作品になっていると思います。
川村元気
原作・監督・脚本
「あなたは誰?」
五年前に私のことを忘れてしまった祖母。
徐々に記憶を失っていく祖母と向き合いながら、私自身が様々なことを忘れていたり、記憶を書き換えながら生きていることに気付かされました。
人間は体ではなく記憶でできている。
どうしようもない瑣末な記憶ですら、それらは複雑にその人に根ざし、その人を形成している。
そんな実感から生まれた小説が「百花」でした。
原作小説を読み、すぐに電話をかけてきてくれた菅田将暉くん。
脚本や芝居について。何度も話し合いを重ねた原田美枝子さん。
監督をしながら自分で書いた物語の記憶は散り散りになり、いまは素晴らしいスタッフ、キャストと共有する記憶として再構成されています。
菅田将暉、原田美枝子の凄まじい姿が映っていることだけは確かです。
その生き様が、観た人のしまいこんでいた記憶を呼び覚まし、この映画を“自分事”にしてくれるような気がしています。
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